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■もくじ 感謝のコトバ 「雪の降る場所で」誕生のきっかけ おまけの話 初期設定で悩む 影の処理について 共同製作について
■Rootsのコメント 今回の作品について、多くの方々からたくさんの感想をお寄せ頂き、本当にありがとうございます。感謝しながらすべてに目を通しています。本来なら、きちんと1つひとつにレスをつけるべきところですが、それができない非礼をお詫びします。と書くと、なんだか人気者気取りみたいに見えるかも知れませんが、そういうことではありません。 1つひとつにレスができない一番の理由は、物語の「解」を少なくとも今の時点で制作者が語るべきではないと思うからです。物語である以上、そこには制作者が伝えたいメッセージやそれぞれのシーンについて込められた想いというのものが存在します。でもその一方で、この作品をご覧になった方が、それぞれのシーンをどう受け止めるかということを限定すべきではありませんし、それらは基本的に観客に委ねられるべきものと考えています。 今の時点で頂いた感想に1つひとつレスをつけることは、コメントを下さった皆さまが感じた物語の解釈に点数を付けるようなおこがましい行為のように思えるのです。 もし制作者の意図を明確な言葉で伝えることがあったとしても、それは少なくとももう少し先の話になるでしょう。今回のFLASH制作に関する苦労話は、本当にたくさんあるのです。全部ではないにしても、ちょっと楽しめるテイストにして皆さまにお届けできたらいいなあと。せっかく5カ月もの長期に渡り精魂込めて1つの作品ができあがったのですから、この達成感は私自身できるだけ長く楽しみたいし、こうやって文章にすることで「雪の降る場所で」をいろんな角度から皆さまにも楽しんで頂けるのではないかなあと思っています。 ■滝本さんのコメント このお話を書くとき、物語の結末を、落とすべき所からほんのちょっとだけずれた所に落とそうと考えました。今観てくださった方たちの感想を見ていると、うまくいったのではないかなと思っています。ばちっとした定義はされていなくて、作品がふわふわふわふわ漂っている感じ。泣ける物語を書くというより、たくさんの人にわだかまりを残してやろう、などと考えていました。ルーツさんは五ヶ月間も実際の“作業”をやっていて、どうも今カタルシスの真っ只中にいるみたい。だからこれから色々やって余韻を楽しむそうです(笑)。ルーツさんも寄せられた感想を評価したくないと言っていることですし、私も何かしらの説明をしたりするのは控えたいと思います。私のことを言うと、公開された時点で、この物語のことはスポンと頭の中から離れていきました。あとは何処へなりとも行くがよい。
「雪の降る場所で」を制作することになったいきさつを書いてみます。 友人の滝本さんからそのメッセージが届いたのは、2003年11月下旬。結婚式のお祝いフラッシュ「Keep on lovin' you」公開直前で、最後の詰めの作業を行っているときでした。 たきもと :フラッシュってものすごいかっこいいやつ、とかにこだわらなければ、すぐマスターできるもんなんでしょうか。 わ、滝本さんがフラッシュデビューか!? 聞くところによると、放置されたドラを見ていていいお話を思いついたとか。でもそれだけのためにフラッシュをマスターするのはだるいなあとのこと。 るーつ :タイトルは「a dragon」ですね フラッシュ制作は最初がとっつきにくくて慣れるまでが大変という話をして、今制作中のフラッシュが作り始めてからちょうど2週間だと言うと、「2週間もかかるような創作って性格的にやってられないんだよなあ」と。 その時は、自分が制作中のフラッシュを完成させることに気持ちが集中していたこともあり、特に実現に向けた話がなされたわけではありませんでした。滝本さんがフラッシュ制作を始めたら面白いだろうとは思いましたが、同時に、それが実現することはまずないだろうとも思っていました。 数秒で終わる単発ネタ程度のものを作るならともかく、いきなり尺の長い作品を作ろうと思ってもまずできるものではなく、その前にかなりの時間を割いて簡単な練習用フラッシュをいくつか作ることで基礎を学ばなければならないだろうし、実際に1つの作品を仕上げるためには、大変な苦労と長い制作期間、そして途中で投げ出さない勇気と絶対に完成させるという強い意志が必要になるのです。 その後、私は無事「Keep on lovin' you」を公開することができました。 そして、満足感に浸る時期も落ち着いてきた頃、新しいフラッシュを作りたいという欲求がふつふつと湧いてきました。何をというのではなく、「何かを」作りたい。でも具体的なものが浮かんでこない。 何を作ろうかと考えていたときに頭に浮かんだのが、以前滝本さんが口にしたお話のこと。 実は、滝本さんがあたためているというお話をフラッシュ化するということについては、初めてその話を聞いたときからずっと気にかかっていました。もし滝本さん自身で実行しないのであれば、それを作れるのは自分しかいないだろう、そうでなければ永遠にその作品が日の目を見ることはないだろうと。この時点で、滝本さんに声をかけてみようという気持ちはもうほぼ固まっていました。 とはいえ、この件で滝本さんに話を持ちかけるのはかなり勇気のいることでした。 まず、私はストーリーもののフラッシュをこれまでに作ったことがないという不安。ストーリーものとなればある程度尺の長い作品になることは容易に想像され、今までのひとりで作っていたような気楽さはなくなり、求められる作品レベルもかなり高いものになる。後戻りはできない。果たして自分にそれだけの資質はあるのかと。 その一方で、ストーリー系フラッシュへの憧れはもう止めようもないほど強いものになっていました。 かつて「a dog」を見てフラッシュ制作に興味を持つようになった人間としては、いつかストーリーもののフラッシュで人を感動させたいという気持ちは常に抱き続けており、そのチャンスが今目の前にあるという現実。制作者としての自分の技術レベルの低さは自覚していましたが、今を逃したらもうその機会は永遠に与えられないかも知れないという気持ちがありました。私には前に進む以外の選択肢が見当たらなかったのです。 そして運命の2003年12月20日。滝本さんとの会話ログ。 るーつ :そういや滝本さん、この前FLASH作ろうかという話してましたが、その後の進展はないんですか 一瞬の沈黙。 るーつ :提案なんですが このようにして、今回の企画が動き始めたのでした。
「雪の降る場所で」を公開して約2週間になります。 たくさんのコメントを頂きありがとうございます。改めて御礼申し上げます。 実はこの作品、最後にちょっとだけおまけが入っています。 エンディングテロップ終了後、「Replay」ボタンが表示されたら、右クリック→再生してみて下さい。 誰も気付いてくれないみたいなので自ら公開。 さらに、5月に出した予告編も同じ場所におまけが入ってたり。
2004年1月9日、滝本さんから初期プロット(脚本)が届きました。 最初の印象は、素敵なお話だなーということ。同時に、滝本さんらしい淡々とした物静かなお話だなあと。そして、わくわくした気持ちの影で、ちゃんと公開できるレベルにまで持っていけるのかという一抹の不安。 で、次の瞬間からもう具体的な設定の検討を始めましたが、「物語のイメージを膨らませる」という作業が一番重要で、とても大変でした。脚本に書かれているのは、各シーンの簡単な状況説明とセリフだけ。この時点ではまだタイトルもキャラ名も決まっていません。だいたい、一番最初のシーンなんてこうですよ。 「シーン1」 これしか書いてない。これ以上の補足説明もナシです。当たり前のことですが、初期設定は後から変えることがほとんど不可能なので、最初にきちんと決めておく必要があります。 喋っている場所なんて、ブリだろうがトリだろうが好きにすればいいやんと思われるかも知れませんが、どこでもいいというわけにはいきません。どこでもいいけれど本当にどこでもいいというわけではない。ここでなきゃいけない場所とアングルがあるのです。銀行と厩舎が近くてテイマーにとって便利な立地であり、ブリテンほど騒がしくない街を好む主人公のホームタウンということで選ばれたのが、スカラブレイの厩舎前。キャラの服装や立ち位置も考えなきゃならないし、主人公とその友人のキャラ名も決まらなきゃセリフも喋らせられない。 過去に作ったPV系のFLASHでは、背景やシチュエーション、服装、立ち位置なんて、ほとんど考えたことがありませんでした。極端な話、既に手元にあるスクリーンショットを並べて動かしていれば一応それなりに見えていたのです(極端に言えばですよもちろん)。 画面に登場するすべてのものを創造しなければならないとは、なんて大変なことなんだろうと途方に暮れました。物語系のフラッシュを作る人って凄いなあと思わずにはいられませんでした。(私はこの時点ではまだ「物語系のフラッシュを作る人」ではありませんでした。) ■画面サイズ 画面サイズは、背景やキャラが動くエリアだけではなくて、セリフが表示される部分や余白も含めて決定されます。セリフは画面内にUO文字で表示することも検討しましたが、見やすさの点から字幕方式を採用。動画エリアは試行錯誤の末、縦横比を1:2にしました。いや、1:2だったというのは後から(というか実はさっき)気付いたんですけども。 ■フレームレート 意外に悩んだのはフレームレート。フレームレートとは1秒あたりのコマ数のことです。数字が大きいほど動きは滑らかになりますが、フレーム数が多すぎると激しい動きの際コマ落ちすることがあり、ファイルサイズも大きくなります。あまり動きのないフラッシュの場合、無駄にフレームレートを上げてもあまり意味がありません。逆に、この数字が小さすぎると細かい演出や表現が難しくなり、動きがぎくしゃくしがちです。 (参考までに「鍛冶屋の受難」は36fps、「hinataメモリアル」は10fpsです。映画は24fpsといわれています。) ストーリーものだし、脚本を読む限り大胆な動きはなさそうなので12fpsでもいけそうでしたが、あとでPVみたいな動きが入るかもと思い、余裕を持って24fpsに決定。 余談ですが、この時点ではまだ「そして冒険が始まった」から始まる戦闘・回想シーンは明確な形では存在しませんでした。ここ作るときに、24fpsにしておいてよかったと思った。 ちなみに、初期プロットでの戦闘・回想シーン↓ 「シーン4」こんだけ。 これが前半の山場に化けるとは滝本さんも思っていなかったに違いない。がんばった俺。 ■「Next」「Back」ボタン 地味にヒットだと思っているのが、画面上部に置かれている「Next」「Back」ボタン。これにより、いつでも次のシーンや前のシーンに進んだり戻ったりすることができます。このボタン、最初は自分のために作りました。プレビューして確認するときにいちいち目的のシーンまで待たなくて済むように。でも実際に作ってみたら、これは自分だけじゃなくて見る人にとってもかなり便利じゃないかと。 私自身、他の方の長いFLASHを見るときに好きなシーンだけ繰り返して見たいと思っても、それができないもどかしさを感じてたこともよくあったので、このまま実装することに。 書き始めると長くなるなあ。まだ続きそうです。
今回のフラッシュを作る上で、面倒なことと知っていながらも必ずしなければならないことがありました。それは、「影」の処理。 UOのキャラクタ素材を作成するツール「UO Super Viewer 2」(UOSV2)でキャラ素材を作っていくのですが、書き出し時に影を「つける」か「つけない」かを選択(設定)することになります。UOSVシリーズでは影のみにする設定も可能です。
でも実際のUOでプレイしてみると、影は真っ黒ではなく半透明で表示されます。 これをフラッシュで実現するためには、キャラ本体部分と影部分を別々に作っておいて、それを合成させるという作業が必要となります。合成させる際にフラッシュ側で影部分だけ半透明の処理をするわけです。
この処理は、技術的に難しくはありませんが、すべてのキャラ・すべての動作にこの処理を施すのは地味にちょーーー面倒です。単純に考えても作業量は当社比3倍になります。私の過去の作品でも半透明の影を使ったことはありませんでしたし、数あるUOフラッシュを見ても、この処理が施されている作品は「a dog」だけのようです。(追記:ウルティマS∴T∴工房様の「派閥2周年記念」などのフラッシュにもこの処理が施されていました。失礼しました。) キャラのすべての動きに対してこの処理をするのは、本当に気が遠くなるくらい大変な作業でした。しかも、観る人のほとんどは影が半透明かどうかなんてところは普通注意して見ません。 でも、今回のフラッシュは本格的なものにしたいという強い意志を持って臨んでいたので、この部分で妥協することはできませんでした。 あれ、後からよく見直してみたら、一瞬だけちょい役で出るキャラの中には影がないものもありましたわははー(笑ってごまかす)。
フラッシュ「雪の降る場所で」にたくさんのご意見・ご感想をお寄せ頂き、改めて御礼申し上げます。本当にありがとうございます。 掲示板での「雪の降る場所で」に関する感想や議論については、こちらで書いた理由により、コメントを入れておりません。せっかく頂いた感想1つひとつにコメントできず申し訳ありません。「雪の降る場所で」以外の話題についてはレスをしているので、レスされている投稿とそうでない投稿が混在する状態になっており、レスされていない投稿者の方が気を悪くされたら申し訳ないのですが、何卒ご理解の程よろしくお願い申し上げます。 だいぶ間が空きましたが、「雪の降る場所で」制作にまつわるお話の続きです。 「雪の降る場所で」は私にとって初のコラボレーション作品なので、今回はその辺について触れてみます。 複数の人間が集まってひとつの作品に取り組むとき、一番重要なのはその作品が持つ世界観を制作者間で共有できるかということだと思います。これがうまくいかなかったら、どんなに優秀な制作者が集まってもいいものはできない。今回、私たちの試みが成功した(と言っていいと思う)のは、その辺りの意識合わせ(世界観の共有)をできたことが一番の要因でしょう。 この作品で一番最初に作ったシーン、それは予告編です。予告編を作ること自体は、このフラッシュを作ることが決まったときから考えていました。そのことは滝本さんにもメールで伝えていたのですが、どんなものにするかが決まったのが2004年1月10日。 滝本さんとの会話ログ。 滝本 :予告編作るんですか?という滝本さんの提案で、予告編の画面構成が決まりました。 一番最初にこのお話のイメージを見せることにより、観客に雰囲気をつかんでもらいたいという狙いもあったので、予告編の絵をスタートボタンとすることに。 頭の中に描かれた背景の構成イメージに合うロケ地を求め、ブリタニア中を走り回りました。が、いい場所が見付からず、結局自分でパーツを合成して作りました。木の配置、焚き火、倒木のベンチなどはすべてUOSVOEからパーツを書き出して合成しています。 この予告編を滝本さんに見せたところ、自分のイメージどおりだという言葉が返ってきたので、それで「よし、いける」と思いました。予告編を作った時点ではまだ決まっていないことがたくさんあって、無事完成までもっていけるかという不安が大きかったのですが、このイメージを共有できたことでかなり安心できました。また、世界観の認識について噛み合わない議論をすることがなく、その意味では非常にスムーズに進んだといえます。制作者間でこの認識がずれてしまうと、制作者にとっても作品にとっても(もちろん観客にとっても)悲惨ですから。 また、1人で作っていると、作った表現がいいのか悪いのか自分では全然判断できなくなるので、滝本さんとの共同製作とすることで素直な反応や的確なコメントをもらえたり、重要シーンについて協議したりできたことは大きかったです。もし1人だったらもっと淡泊でつまらない作品になっていたと思いますし、そもそも完成すら危うかったでしょう。 唯一最後まで揉めたのが、物語の最終シーンとなる別れの場面。 どこまで伝えてどこから先を観客に委ねるべきか、細かなニュアンスの部分も含めて最後の最後まで議論と調整が続き、何度も作り直しました。2人の友人にモニターになってもらったのですが、両者ともにダメ出しを喰らい、ちょっと凹みました。でも、そのおかげで、完成後はもうこれしかないという手応えがありましたし、今でも最良の選択をしたと思っています。 さて、「雪の降る場所で」にまつわるお話はとりあえずここまでということにします。 もっとディープな話(例えば、なぜあの場面で主人公はあのような行動をとったのか等)をお望みの方もいらしたかと思うのですが、無粋な感じになりそうなので、物語の解釈に関してはできるだけ書きませんでした。 言葉で語るよりも、もう一度この物語をご覧いただいた方がよいだろうと思います。 長々とお付き合い下さり、本当にありがとうございました。 前のテキスト 次のテキスト |