トップ

前のテキスト  テキスト一覧  次のテキスト


 ベンダーのこだわり 1 (2001/6/20)

ある日、PAFデパートに1人の女戦士がやってきた。
「装備がよく分からない…」と言う。話を聞いてみると、AR重視で装備を一式揃えたいことが分かった。DEX自体は十分高く、プレートで固めても心配はなさそうだ。
そこで、私のベンダーで売っているフルプレートAR48セットをお勧めすることに。私の販売するフルプレートは、他店ではなかなか入手できない全8色。選択肢の幅は広いし、きっと満足してもらえるはず。
しかし、今度は「お金が足りない」と言う。
私の店で一番安いノーマル色のフルプレートは現在 4500gp。予算は 3600gp とのこと。ふーむ、差額は 900gp か…。普通だったらまけてやるところなのかもしれない。
そして案の定、彼女は言った。

「出世払いにしてくだされ」

なるほど、一般的にはそういうのもアリだろう。だが、申し訳ないけれども私の店では値引きをしない方針だ。私はそのことを伝えた上で、こう提案した。

「一番値が張るのはプレート胴の部分です。それ以外をプレートにして、胴をチェインにしてはいかがでしょうか。そうすれば、ARはそこそこ高く、DEXの減少も抑えられます」

この提案に彼女は納得して買い物を終え、予算内でAR40の防具が手に入ったことに満足した様子で店を出ていった。

状況は様々だろうが、値切ってくるお客に対して、それに応じ、お得感をアピールして好感度を与え、リピーターに繋げていくというのも確かに1つの方法だ。
だが私は、価格の融通は利かなくても、それ以外の部分で顧客に還元したいと考えている。他店ではなかなか買えない色付きのフルプレートを揃えているのもそのためだし、補充は出来るだけ毎日行って、品切れがないよう努力している。お店に来てくれた方への無償修理も当然のことだ。
価格設定自体は他のベンダーより高めかも知れない。それでも、品揃えと品質にこだわり、顧客の要望に添った提案や武具に関する知識の提供をしていくことで、店への信頼に繋がっていくものと考えている。

もちろん、このこだわりを直接来店者に話すことはない。
普段は物言わぬベンダーがただ品物を売るのみ。それでも、この店を訪れる人が武具の品揃えを見て、鍛冶職人の心意気を感じてもらいたいし、またそれを感じられるベンダーにしたいといつも考えている。
こんなわがままなベンダーに理解を示してくれる店長に感謝しつつ。



前のテキスト  次のテキスト




トップ  テキスト一覧